2018年3月2日金曜日

日本茶の楽しみ方


日本茶の楽しみ方
日本茶の楽しみ方



【講師紹介 加藤 伸之氏】
株式会社福本園代表。平成17年、日本茶インストラクター取得。その後東京都及び全国茶審査技術協議会で入賞、優勝を重ねている。平成28年に茶審査技術九段取得。現在、加藤氏がブレンドしたお茶を販売。


【はじめに】
福本園の加藤です。本日は町内会の大先輩もおられるので緊張気味ですが、分かりやすく説明していきたいと思います。本日アシスタントの姉も日本茶インストラクターです。お茶の美味しい淹れ方、正しい知識を皆様に伝えることによって、お茶を親しみやすいものにしていく役目を担っています。お茶はやっぱりいいなぁと思って頂けるよう頑張って説明していきます。

【日本茶レッスン】
お茶の学名はカメリア・シネンシス、ツバキ科ツバキ属です。ツバキの葉はお茶の葉と似た形状をしており蒸して製造すると、味は違うと思いますがお茶に近いものが出来ると思います。お茶のアッサム種は巨木で葉の大きさは1520cmと大きく、紅茶の原料です。中国種は灌木で葉の大きさは5cmくらいで、日本茶の原料です。アッサム種は寒さに強く、中国種は寒さに弱い特徴があります。

生葉には酸化酵素がふくまれており、どの段階で酸化を止めるかで紅茶、ウーロン茶、緑茶になります。緑茶の場合は摘み取った葉を蒸気で直ぐに蒸すことで緑色が保たれます(不発酵茶)。紅茶は摘み取った葉を放置して空気に触れさせ萎れさせて酸化、そして火を入れることで赤くなります(発酵茶)。ウーロン茶はその中間で萎れさせ、釜で炒って発酵を止めます(半発酵茶)



茶の種類
煎茶には普通煎茶と深蒸し煎茶があり、関西は普通煎茶(浅蒸し煎茶)が、関東では深蒸し煎茶が一般的です。玉露は直射日光を20日間位遮って葉にうま味が凝縮され手摘みで採るので最高級茶となります。かぶせ茶は関東で売っている店は少ないと思います。煎茶と玉露の中間の商品です。玉露と違うのは寒冷紗という黒いネットで日光を遮っています。釜炒り製玉緑茶(たまりょくちゃ)は、以前輸出用として中国茶に倣って製造していました。蒸し製玉緑茶は、釜炒り製より簡易的に作られています。碾茶(てんちゃ)は、煎茶と違って揉まずに葉脈を取り除いて作り、石臼でひいて抹茶になります。番茶は下級茶であったり、焙じ茶であったりします。一般的には大きくなった茶葉で製造したものを指します。再加工茶は番茶を焙煎したものが焙じ茶になり、煎茶に玄米を混ぜたものが玄米茶になります。

普通煎茶は浅蒸し煎茶とも言い、淡色で透明感があります。逆に深蒸し煎茶は鮮やかな緑色で濃厚感があります。昔は普通煎茶が主流でした。山手の茶畑では霧が発生しやすいので日差しが柔らかくなり茶葉の成長が緩やかなため葉が厚くなり難い。そして揉んだ時に、ぎゅっと身が締まったものが作りやすくなります。深蒸し煎茶は、平地の茶畑で栽培するので日差しが強く葉が厚くなり苦み成分が増えてきます。それを緩和するために普通煎茶は60秒蒸すところを深蒸し煎茶は120秒蒸します。その結果、茶葉は柔らかくなって崩れやすくなるため、揉むと細かな形状のお茶になります。このため湯に入れた時に普通煎茶より出やすくなり、苦み渋みも少なくなります。

【湯温とお茶の味】
美味しいお茶の淹れ方にかかわってくる部分です。縦軸は時間の長さ、横軸はお湯の温度です。お茶の味を構成する成分は、カフェインが苦み成分、タンニン(カテキン)は渋み成分、そしてアミノ酸類はうま味成分です。美味しいお茶を淹れるにはカフェイン、タンニンを出さずに、そしてうま味成分のアミノ酸類を如何に出すかです。カフェイン・タンニンは熱いお湯を入れるとサーッと出てきますが、低い温度では出てきにくくなります。一方、アミノ酸類は低い温度でも出てきます。この特性を利用するのが、美味しいお茶の淹れ方になります。


【お茶の効能】
カテキンは、抗酸化作用・抗菌作用・抗がん作用があります。抗がん作用はマウスの実験でがん細胞が小さくなることが実証されています。その他抗ウィルス・抗アレルギー作用があります。お茶でうがいをすると殺菌作用があると言われています。あと消臭作用があります。冷蔵庫の中にお茶の葉を置いておくと悪い臭いを全部吸って消臭効果を発揮します。市販されている消臭剤でも「緑茶の力」とアッピールしているものもあります。カフェインは興奮作用、眠気の防止、利尿作用が、テアニンはお茶のうま味成分ですがリラックス効果が、ビタミンCは美容に良いと言われています。 健康効果を期待してカテキンを取りたいとか、眠たいので頭をすっきりさせたい時は熱いお湯で淹れて下さい。180mgを一気に摂取するとカフェイン中毒になると言われています。お茶のカフェインは100ccのお茶に対して20mgなので(90℃で430ccのお湯で抽出した場合)9杯のお茶を一気に飲むことは現実的には考えられません。カテキンは空きっ腹の時に飲み過ぎると胃があれてしまうので、食後に摂取するのが良いでしょう。




【お茶の淹れ方】
水を23分沸騰させるとカルキ分が飛んで柔らかいお湯が出来ます。茶葉の量は2g×人数と考えて下さい。お湯の量は60ml×人数です。普通煎茶の場合は70℃で1分間、深蒸し煎茶は70℃で30秒です。普通煎茶は堅めのお茶なので時間をかけないと味が出てきません。深蒸し煎茶は柔らかくて細かいので短くて済みます。またお茶の注ぎ方では濃さが同じになるように廻し注ぎをし、最後の一滴まで注ぎ切ります。注ぎ切らないと茶葉が開いて2煎目が美味しく無いです。2煎目は湯冷ましをしないでポットから直接入れ、浸出時間は1煎目の半分くらいです。以上4つのポイント、①お湯の温度、②お湯の量、③お茶の量、④浸出時間(待ち時間)を守ると、誰でも美味しいお茶を淹れることが出来ます。ポットのお湯の温度が90℃の場合、冷たい湯飲みに移すと約10℃下がります。本日実演で持ってきたお茶は、福本園で1001000円で売っている川根茶です。

【お菓子との組み合わせ】
個人的な感想ですが、お茶は辛いものも甘いものも何でも合うと思います。以前、干し柿の普及を図っている団体さんから干し柿と相性の良い煎茶の組み合わせを依頼され、その時に作成した資料です。ころ柿は表面に白い粉が付着するまで乾燥させたもの。あんぽ柿は、ねっとりとしたくらいに乾燥させたものです。また産地によって特徴が異なっており市田柿はさっぱりした柿だったので、さっぱりした宇治茶をチョイスしました。堂上蜂屋柿はフルーティな濃い味がしたので、濃い味の深蒸し茶をチョイスしました。あんぽ柿はねっとりとした柿だったので、切れのある狭山茶を合わせました。能登志賀ころ柿はまろやかな味だったので、旨味が強い鹿児島茶をあててみました。

弊社で扱っているお茶は、すべて私が吟味してブレンドしたものです。以前はブレンドされたものを売っていたのですが、今はパッケージを一新して私の監修で諸国銘茶を提供しています。先ほど実演で浅蒸し普通煎茶として淹れたのが、静岡・川根茶です。そして深蒸し煎茶として淹れたのが、静岡・掛川茶です。埼玉の狭山茶は静岡より寒いところで作っているので茶葉が厚くなりやすく、お茶の製造の最後の工程で火入れ作業を強く行います。その為、急須に入れた時にプーンと香ります。川根茶は霧のある山の上で栽培されるので、非常に味のあるお茶です。京都・宇治茶は有名です。地方によって好みの茶が違います。静岡では深蒸し茶が主流ですが、京都や関西では浅蒸し茶が主流です。福岡・八女は玉露の名産地でもあり、八女茶は甘いお茶です。佐賀の嬉野茶は釜入りのお茶です。鹿児島は静岡に次いで二番目に大きな産地で、下級茶は鹿児島茶がブレンドされることが多いです。ご家庭用の普段飲むお茶として1001000円、800円、600円位のものが売れています。お客様をもてなす場合は、1001000円以上の上煎茶が相応しいと思います。お茶業界で一番盛り上がるのは新茶の時です。新茶として売るものは火入れを少しぬるくして新芽の春の香りが出るようにしています。

【質疑応答】
    時々福本園で外国人のお客さんを見かけますが、どんな話題が多いですか。
→ キッカケは海外から来る人の民泊をやっている組織の方が、外国人に日本茶を紹介したいということでした。姉は英語が堪能なので通訳してもらい頻繁に来てもらっています。その窓口の人はフランス人で、お茶が大好きで、私もびっくりするくらい色んなことを知っていました。浅蒸しのお茶が好きで、川根茶をよく買ってくれます。
    戦前は日本から米国にお茶をたくさん輸出していました。今はどうですか。
→ 今は減っています。欧州の基準が厳しくて、日本で使っている農薬は現地の基準をクリア出来ないため、有機栽培したものが輸出されています。また欧州では日本のようにストレートで飲むよりも、お砂糖を入れて飲まれているようです。あと煎茶より抹茶の方が認知されています。
(後日確認したら、一番輸出量が多いのは米国でした。欧州は、近年輸出量が増えていました)

    欧州の水質は問題ないのですか
→ 以前、日本茶インストラクター協会では硬度30くらいの軟水が一番良いと指導していました。硬水でお茶を淹れた場合、淡泊になるとの意見がありました。今では硬水の味わいも1つの特徴だと否定はしていません。
    お茶に深蒸し煎茶と明記されているのですか。
→ 関東のお茶屋さんでは深蒸し煎茶が主流です。細かい形状をしているのが深蒸し煎茶です。
    お茶を冷蔵庫の消臭剤にする場合、出がらしのお茶を干して使うのですか。
→ 飲まなくなった古いお茶を使ってください。消臭したお茶は湿気を吸うので飲めません。ちょっと傷んだお茶や古くなったお茶はフライパンに入れて火をかけるときつね色になり、ほうじ茶になります。
    冷蔵庫の消臭剤として使う場合、お皿に入れてラップをかけて入れるのですか。
→ どんな形であれ、お茶がそのまま置かれていれば臭いを吸います
    出がらしのお茶を植木に入れると肥料になると聞きました。それは本当ですか。
→ 抗菌作用はあると思いますが、肥料になるのかは分かりません。
    新茶の淹れ方も、本日の美味しいお茶の淹れ方で良いのですか。
→ 基本は湯冷ましをしてじっくり出すのが良いのですが、私は新茶の香りが特徴だと思うので、香りを引き立たせるために若干熱めの80℃くらいのお湯で淹れます。
    お湯の注ぎ方によって、味が変わりますか。
→ 私が気を付けているのは最初はゆっくり注いで、あとはダーッと入れる感じです。網が付いている急須と茶こしが付いている急須があります。前者の急須の方が、中で茶葉が広がって味が出やすいです。後者の急須は中で茶葉が広がりにくくて同じように淹れても美味しく出ないことがあります。
    常滑など土質とお茶の相性はあるのですか。
→ 常滑焼の方が萬古焼より美味しいお茶が出ますよといったら三重県四日市から苦情が来ると思います。普段、私達は白地のツルとしたものより土を焼いたものの方が、お湯が丸くなる感じがしています。
    紅茶なら、なるべく多くの空気を含ませるために高いところから注いだらよいと言われています。日本茶にも、そう言うことがありますか。
→ 出したものを空気に触れさせるというよりは、雑味が出ないよう急須をあまり振らないようにしています。急須の蓋に穴が開いており、そこから空気が入り急須の中で茶葉が回ります。
    急須の形は、丸い方が良いのですか。
→ 底辺が小さくて丸い急須より、底がしっかりしている方が美味しいお茶が出ると個人的に思っています。

【受講者の感想】
お茶があんなに種類があるとは思わなかった
日本茶の奥深さを知りました。さっそく淹れ方を工夫して美味しく頂きたいと思います。そして試飲して楽しみを感じました
実演で頂いたお茶の色めは濃くないのに、香りと味が良いのに驚きました
大変参考になりました。心して実行したいと思います
良い勉強になりました。家に帰って丁寧にお茶を淹れてみようと思います
美味しいお茶でした。自分流からすると随分低温でした。これは発見でした
普段飲んでいるお茶を深く反省しました。美味しい味にびっくりです。抹茶の茶道だけでなく、煎茶の淹れ方にも作法が感じられました
大変良かったです




【開催】
日時:  2018113日(土)10001130
会場:  雑司が谷地域文化創造館 第1会議室 B
参加者: 26 マナビト生、豊島区民