2019年3月1日金曜日


がんについて学ぶ、がんとともに生きる



1、日時  2019年2月24日(日曜日)18002000   
2、場所  としま産業振興プラザ6階 第3会議室
3、講座名 「がんについて学ぶ、がんとともに生きる」
4、講師名  河田 純一氏 
   大正大学大学院 人間学研究科博士課程
   慢性骨髄性白血病患者の会 いずみの会 幹事


5、講座内容
【自己紹介】
 200512月 大学2年冬(21歳)朝起きられない、だるい
        39度の発熱で倒れる 
        慢性骨髄性白血病CMLと診断される
        血液内科に入院
 20064月~大学休学  薬の強い副作用で通学困難 体中の痛み、痺れ、吐き気、下痢等
 20073月 大学中退
 20116月 いずみの会(患者会)スタッフ
 20124月 大正大学再入学
 20154月~大学院入学  医療社会学を研究

【白血病の分類と慢性骨髄性白血病CML 
  白血病は大きく4種類に分類される。
白血病には様々な種類があるが、がん化した細胞のタイプから骨髄性とリンパ性に分けられる。
   急性(がん化した細胞が急速に増殖する)――・急性骨髄性白血病  ・急性リンパ性白血病
   慢性(がん化した細胞がゆっくり増殖する)―・慢性骨髄性白血病  ・慢性リンパ性白血病
  慢性骨髄性白血病CMLとは
 がんは一般に遺伝子や染色体に傷がつくことで発症すると考えられている
 CMLでは患者の95%以上でフィラデルフィア染色体という異常な染色体が見つかる
 ・フィラデルフィア染色体の異常(9番と22番染色体の転座) なぜ異常になるかは原因不明
・発症頻度は10万人に12
・病気の進行は遅い 慢性期5~6年 健康診断などで見つかることが多い(白血球数の増加)
・「分子標的薬」の登場で、CMLで亡くなることは極めて稀になる 10年生存率8495
 課題は治療費 11万円以上の薬代 3割負担でも毎月10万~16万円前後かかる
・がんになっても生きている人が多い
 治療方法が格段に進歩して、普通に生活しながらがんを治療している人が増えた
 がんの慢性疾患化   入院期間が減少し、外来で治療している人が多くなる

【がんの社会的イメージと病の経験】
  病の経験
・医療人類学者のヤング――人間が経験する病気の全貌を理解するために、1982年に発表した論文で、「病気」「疾病」「病い」の3分類を提唱した。
「疾病」…医学的な意味
「病い」…人々の経験する意味→ 病いの経験を物語論の視座から論じる
              → 病いの語りへの注目
病い + 疾病 = 病気
  がんの社会的イメージ
・「がん」にどんなイメージを持っているか…TVや新聞・雑誌・ネットの健康情報に影響される
・家族や友人・知人のがん経験からイメージする
・一人一人の病いの経験を知っていく
・「がんのイメージ」→ 時代による変化  以前はがんは死の病いのイメージ
          病人にがんを伝えられず、がんを公表することすら反対された
・がんのスティグマ(stiguma)→ 恥辱、汚名、犯罪者・障害者・病者などへの負のレッテル
    スティグマとは、もともとはギリシアで奴隷・犯罪人・謀反人であることを示す焼き印・肉体上の「しるし」で、汚れた物・忌むべき者というマイナスイメージが肉体上に烙印されたもの
 スティグマは他者からだけでなく、自分自身によっても付与される
(例)病人なんだから  「がん患者」だから・・ねばならない

AYA世代のがん】
  AYAAdolescent and Young Adult)世代、思春期及び若年成人
15歳以上40歳未満のがん患者(治療終了後のがん患者、AYA世代にある小児がん経験者も含む)
・政策面:子供医療費手当は15歳まで、介護保険は40歳から
・医学面:小児がんを含めた希少ながん、他の年代より患者数がすくない
・社会・心理面:就学、就労、恋愛、結婚、妊娠、出産などのライフイベントを迎える
  今、なぜAYAが注目されているのか
・治療率が上がり、がんを患った後も生活が続く
・病気の治療が生殖機能に及ぼす影響、通勤や通学に及ぼす影響、思春期という多感な時期に病気になることによる様々な精神的ストレス、将来への不安など問題が多い
・医療費の社会的保障がない世代
・小児がんは希少がんが多く症例も少ない
・院内学級 小学校中学校はあるが、高校は少ない  地方の病院では院内学級がない
  がんと就労
・がん経験者のうち80.5%の人が「仕事を続けたい」と回答
 患者の家族のうち、52.2%の患者が「仕事をしてほしい」と回答(東京都保健福祉局2014
・がん患者が働く理由…〇経済的な問題  〇働くこと=社会参加
  ・「第3期がん対策推進基本計画」
「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」
  ・働き方改革―――がん患者として働ける
           慢性疾患とともに働ける
           多様な働き方を実現する
  ・5年生存率の向上→ 5年後も生きている 生活は続く がん経験者でも働いていることが普通

【質疑・応答】
 (質問)がんであることを告げられたら、どう接していけばよいのか?
 (河田)その人によって異なるが、「必ず治る」とは言えない。「奇跡が起こる」もダメ。若い人に対して「若いから大変ね」は言わない。お見舞いに行ったり、普通の病気の人と同じように接してあげる。健康食品とか、メディアの情報をうのみにした「こうするといいよ」というのはやめてほしい。

(感想)
河田さんご自身の闘病経験から語られた言葉は、説得力がありました。統計資料を豊富に用いて話され、医学的な難しい説明も分かりやすかったです。
AYA世代のがんについては、先日水泳の池江選手が白血病を公表して以来関心が高まっていますが、希少がんの治療の困難さや社会心理面でも対応の難しさなど、改めて気づかされました。
今までは、生存率という言葉があるように「がん=死ぬかもしれない」というイメージでとらえていました。今日のお話を聞いて、がんは治る病気であり、慢性疾患の一つという捉え方ができるようになりました。でも、再発すると怖い病気だと思います。
スティグマについてはまだ良く理解できていませんが、誤った知識から患者に対して偏見・差別を持ち、誤った態度で接してしまう怖さを知りました。自己スティグマは、差別をされた経験から差別を受ける予測をしてしまい、自分自身によっても付与されると知り、社会自体が「がん」に対して正しい認識を持たないとならないと感じました。
(記録 本間氏)