「近現代の仏像の話」
君島彩子氏
総合研究大学院大学 博士後期過程、国立歴史民俗博物館
(1) 明治以降の新しい仏像
特徴
→ 古い仏像は、史料や伝承を調査する。新しい仏像は、それだけでなく関わった人にインタビューする調査を行うので、情報が多い。
→ 誰が何を願い仏像を作りたいと思ったのか、そして誰がお金を出して誰が制作したのかなど、仏像を知るうえで重要な時代背景、社会背景の影響を検討しやすい
造形
→ 近代以降、美術の導入によって「人間に近いかたち」の仏像が選ばれる傾向にある
→ 新しい仏像は、古い仏像を参考にしているが、美の基準は近代以降のもの
→ 堂内は木像、野外は石像が主流だったが、近代以降はブロンズやコンクリート造りも増えた。近年ではFRPなど樹脂やプラスチックの仏像も作られている
(2) 巨大仏の話
→ 巨大仏は40m以上のものを対象。ウルトラマンより大きいというのが一応の目安(宮田珠己『晴れた日には巨大仏を見に』p.11)
→ 『大仏をめぐろう』(坂原 弘康)、『巨大仏巡礼』(クロスケ)、『晴れた日は巨大仏を見に』(宮田 珠己)、『巨大仏』(中野 俊成)、『九州の巨人!巨木!!と巨大仏!!!』(オガワ カオリ)など、近年大きな仏像に注目が集まっている。
→ 巨大仏は、バブル景気(1986〜1991)の前後に建立が集中している。また観光施設として建てられても宗教法人化されないと存続が難しい。
質疑応答
1.
コンクリート表面は塗装しているのか
→ 放置していると鉄筋まで腐食する。モルタルやウレタン加工が行われている事例もある。
→ 1回の塗り直しで約5000万円
2.釜石と仙台の観音は、東日本大震災の時は大丈夫だったのか
→ 奇跡的に被害はなかった
3.今、巨大仏を作るといくらかかるのか
→ 100億円以上かもしれない。ビル建設コストと同じと考えられる
4.観音像の形に決まりはあるのか
→ 明治時代以降の慈母観音は、西洋のマリア像の影響を受けている。『観無量寿経』に阿弥陀如来の化仏を宝冠にもつという記載がある。しかし仏像の形を決める儀軌には、観音様に関する細かい規定は少ないので、新たな形の観音像の影響がある。
5.戦後、観音が多く作られている背景は何か
→ 高崎白衣観音がブーム火つけとなった
→ どの宗派でも信仰されている汎用性が受け入れられた
6.1994年以降大仏が作られていない背景は何か
→ 不景気だけでなく、オウム真理教事件後、宗教に対するネガティブなイメージが定着し、社会が賛同しにくくなったとも考えられる
開催日時 2016年9月20日(火) 午後3時~4時30分
会場 雑司が谷地域文化創造館 地下1階 第4会議室