2018年5月7日月曜日

前向きに暮らす 年金家計の知恵を学ぶ

「前向きに暮らす 年金家計の知恵を学ぶ」

「前向きに暮らす 年金家計の知恵を学ぶ」



【講師紹介】
本日の講師のお二人は「婦人之友」という雑誌の愛読者会で、都内・北西部 (北区、板橋区、練馬区、豊島区、中野区、新宿区) を中心に活動される東京第一友の会、家計簿研究グループに所属されています。友の会は、よい家庭をつくって、それが社会へ広がることを願って衣・食・住・家計・子育てなど、年代を超えて学びあわれている団体です。

前半話される金子明美さんは「婦人之友」20181月号、2月号で読者の家計簿の指導をされています。後半話される大島信子さんは40代でパソコンを始められ、長年パソコンのインストラクターを務められています。


金子 明美
【婦人之友社と友の会】
婦人之友社は、創業者羽仁もと子・吉一の志と二人が生き方に据えたキリスト教信仰を、活動と経営理念に置いています。1903年の創業と共に創刊の「婦人之友」、中高年の生活と健康を支える「明日の友」、若い家庭向けに「かぞくのじかん」の3雑誌を発行。1904年創刊の「羽仁もと子案・家計簿」と「主婦日記」は、もと子の家庭経済に対する予算生活に対する予定生活から創刊。

1927年、婦人之友社「羽仁もと子著作集 115巻」の刊行を契機に、1000人の「婦人之友」の愛読者によって1930年「全国友の会」が発足しました。2020年に90周年を迎え北海道から沖縄、そして海外も含めて187の友の会があり、約1.8万人の会員がいます。
良い家庭が良い社会をつくる、衣・食・住・家計・子育て、また後年の生活など日常生活について学び合い、それを講習会などで社会に発信しています。1921年「自由学園」という学校も創立しています。

「思想しつつ、生活しつつ、祈りつつ」、これは羽仁もと子が残した言葉の1つです。事に当たって本当に考えること、思索すること、その思想を生活すること、そして思い余ること、思っても実行しえないことだったら祈ること、その様な生活姿勢を著しています。友の会や自由学園がモットーとしている言葉です。その全国友の会の建物が、この会場のすぐ近くにあります。明日館は平成9年豊島区の建物として初めて国の重要文化財に指定されました。明日館の設計者は帝国ホテルを設計したフランク・ロイド・ライトで、その帝国ホテルの工事中にライトの事務所を訪ねて、校舎の設計を依頼したそうです。現在は、結婚式や様々なイベント、自由学園主催の講座などに使われています。その向かい側に全国友の会と東京第一友の会が入る建物があります。婦人之友社と自由学園、友の会はお互いに協力し合い社会に働きかけています。



【婦人之友社の家計簿】
生活には必ず経済がともないます。羽仁もと子は一家の財政が健全になるようにと明治37年に家計簿を出版しました。この家計簿は戦争中休刊しましたが、現在まで100年以上続いています。会員は1年間記録した数字を提出して毎年集計してパンフレットにまとめています。羽仁もと子の家計に対する考え方を著作集から紹介すると、「一家の経済というものは、日々の暮らしに事欠かぬように、病気その他ありがちな難儀に備える貯金があって、与えられた子供をその才分に応じて教育することができ、大なり小なり暮らし相当の家屋敷でも持って、老後も子供のやっかいにならずに、静かに暮らせる程度が上乗のものだと思います。」また「私達は一体かぎりのない欲望をもっているものですから、もしそのために自分の全収入を用いようとするならばいつでも足らない足らない心持ちがするはずです。」「不景気の問題も、家々の事務から経済から筋道を立てていったら、その力で半分は楽になっていくでしょう。」などが挙げられ、また、必要以上の富みを得ているものは大きな家庭である社会にも目を向けたいとも言っています。友の会では若い人達に健全な家庭生活のために家計簿をつけて欲しいと願って講習会を行っています。これは年金世代にも言えることだと思っています。これから発展していく若い家庭には将来に備えて預金も計画的にしましょうと伝えていますが、年金世代はこれまで蓄えてきた預金を取り崩し生活することになります。それを計画的にしないと始終生活の不安が付きまとうことになります。今日は友の会の会員の家計簿記帳の数字を基にお話させて頂き、年金生活についてご一緒に考える機会にして頂ければと思います。

大島 信子
(主婦の)年代別・年齢別収入と支出】
友の会の活動の中で家計の勉強会はかなりのウェイトを占めています。1.8万人の会員の中で家計簿をつけている人は約8割、詳細な家計簿を報告するのは6割です。そして毎年集計してパンフレットにします。今日お話しする内容は、これから出て来るものが多いです。まず会員の年代別純正活費は20代から50代前半に向けて増加し、50代後半から下り坂になっています。増加の原因は住居費と教育費なので、60代後半から教育費は消えていきます。食費はかかっているように思うけれども全体支出の中で20%にすぎません。また年代別金額は多く思うかもしれませんが、何年に一度しか支出しない車購入やお葬式なども含めての平均です。税金や社会保険、預貯金は、この支出には含まれていません。預貯金から引き出しながらの生活もあります。平均だけでは実感に乏しいので、金子さんの実例を紹介します。

(Aさんの実例)
我が家の1986年~昨年まで32年間の場合です。結婚から18年間は社宅に住み、私が44歳の時にマンションを購入して住宅ローンの返済が始まりました。途中繰り上げ返済を行ってローンは短期間で終わっています。子供の教育費は中学校、高校と進むにつれて徐々に増え、大学では月20万円かかっています。住宅ローンと教育費が重なった時期は支出が大きくなり、夫が60歳の定年前の年に息子が大学を終えて教育費がなくなりました。ここまでは全国の集計と同じようなカーブを描いています。

夫は定年退職後、嘱託として同じ職場に1年、子会社に4年勤務出来ました。年金が基礎部分から出る65歳まで収入があったことは幸いでした。それまでの家計簿記帳から定年後夫が働かなくてもなんとか暮らせる見通しを立てていましたので、夫には好きなようにして良いと言っておりました。夫が60歳で定年退職した頃から特別費(親や子供に関する費用も含む)の割合が増えました。定年退職の翌年に長女が結婚、また夫の母が一人暮らしをしていた福井県へ1年に何度も帰省して交通費がかかっています。夫が嘱託契約最後の1年には息子が結婚、娘の家の新築の援助をしました。2016年は夫が完全にリタイアした年ですが、住居費では17年たったマンションのリフォーム、特別費では長女に改めて新築祝い、息子にはマンション購入などでそれなりに大きなお金が動きました。同じ2016年に夫の母が亡くなり葬儀に続いて家を解体して借地を地主さんに返したのですが、それら一切の費用を母の預金から出せたことは有難かったです。昨年はエアコン3台の買い替えと長女と長男に子供が生まれましたので出産祝いや初節句がありました。特別な支出を抜いた日常生活でも年金収入だけでは暮らせず、預金を毎年崩していくものと将来自宅で暮らせなくなった場合にかかる費用に分けて管理しています。6070代はまだまだ動ける年代ですので、今後の長期的な支出予定を考えながら、その時々生活に回せる金額で旅行など楽しみながら、この先子供に余計な負担をかけないように暮らしていければ良いと思っています。

(Bさんの実例)
私の場合、私が55歳の時に夫が死亡しました。夫がなくなった後に子供3人が結婚して支出が伸びています。その後、一人暮らしでは支出が小さくなって年金生活をしています。夫がなくなる前に住居費の返済をしていますが、その頃は私も仕事をしていたので返済に回していました。夫がなくなった時は、まだ返済金が残っていましたが、それは保険金で賄われました。幸いなことに食べること、着ることへの欲望が少なく、あと23年体が動く間は海外旅行で見聞を広げたり、日々の夢としてのクラシックコンサートを楽しみたいと思っています。


次のグラフは、60代以降の純生活費の棒グラフを円グラフにしたものです。そして60代前半を家族数別に分けて見ると、このような差が出ています。しかし60代から80代以上の費目別支出割合は、ほとんど変わりないです。保健衛生費は、年代が進むと少し増えます。地区別に純正活費を見ると南関東が突出しています。その原因として住居費、食費が他地区より多くなっています。また地方では自家生産のものも食事に取り入れられるので都市部は高くなります。逆に南関東で少ないのは自動車費です。南関東70代の475人の一人一人を点で表わした生活費分布図です。その中心値は36万円ですが、平均にした場合高額の人が水準を引き上げています。その生活費を60代以降は、どのようにまかなっているのか。金額ではなく価格帯で5万円以上をグレー、2万円~5万円未満が白で表わしています。教育費がかかる頃までは妻の収入5万円以上の人も多くありますが、教育費が終わったころから妻は止めています。60代前半以降の収入を支えているのは年金収入と財産収入です。財産収入として家賃や土地代、預貯金の利息や配当金などがあります。家族からとは同居する子供が家に入れているお金などです。その他はお祝い金や相続です。収入が足りなければ預貯金から引き出しながら生活費を補充することになります。


時々大きな支出が襲ってくることがあります。それは見積もれるものもあれば、突然降りかかってくるものもあります。150万円以上あったものを尋ねると結婚は平均115万円くらい、葬儀は平均180万円などです。増改築では何百万から1千万近いものもありますが、調査では300万円以下の増改築を生活費として拾っています。これらの大きな支出が、どの程度の頻度だったかを折れ線で表わしています。60代以上7千人近くの人がいる中で、増改築は400件です。また「その他」では、墓地関連、寄付、太陽光発電、引越費用や火災保険を一括払い、留学、歯の矯正、補聴器などです。


【食費は金額だけでなく、必要な栄養がとれているかが問題】
自分の家の食費が、いくらかかっているかご存知でしょうか。総務省の家計調査では2.99人世帯の消費支出が282,188円に対して食料支出が72,934円、25.8%占めています。これを一人当たりに換算すると24,393円です。友の会の家計調査では家族人数が2.7人、純正活費が380,967円に対して食費合計が64,102円、16.8%と少なくなっていますが、一人当たりでは23,741円と似た値になります。ただ総務省の主食費は6,061円に対して友の会の家計報告では4,782円と少ないのは、ご主人が外で食べる昼食を食費とするか、お小遣いで処理するかの違いから来ているかもしれません。

食費は金額だけでなく、必要な栄養がとれているかが大事になります。健康のために男女が1日辺りどれくらい摂取したらよいかが「日本人の食事摂取基準」で示されています。これを具体的な食品の組み合わせた100g単価を友の会で作成しています。この理論的な食費は、家計調査とほぼ一致します。また1日に食べたものの栄養調査して栄養が満たされているかを友の会では調べています。


【家計簿の薦め】
家計簿はつけてもつけなくても同じと思われますが、つけることによって思っていたことが数字で裏付けられ、不安の解消になったり筋道が立つようになります。拠って家計簿をつけることをお薦めします。家計簿にも色々なものがあります。羽仁もと子の100年以上続いた家計簿は日々の支出が予算を超えないようにやっていくのが特徴です。今回は簡単便利なA3の「一枚家計簿」をご紹介します。1枚に1ヶ月分を書き込むので全体が見渡せます。またご主人と話し合う時に、これを広げて話せば早いです。ダブルインカムの場合、それぞれが1ヶ月記帳して、最後に1本化するのもやりやすいと思います。右端に1か月のまとめる欄があり、これを「一枚家計簿年計表」に転記します。現在、家計簿をつけるうえで難しいのは、クレジットカードで購入すると何か月後に決済されたりプリペイカードで買ったものを、どのように家計簿につけるかです。1ヶ月家計簿をつけたら予算が立てられるようになります。また記帳したものをグラフ化して予算と実績を比較するとはっきり見えて来るものもあります。家計簿をつける習慣は自分一人では続きませんが、仲間を作って話し合うと分からなかったことが解決したりします。



【社会への責任を持つために】
友の会会員18千人の年間生活費は800億円です。このお金の使い方によって社会への影響があるので、羽仁もと子が言う「家庭は簡素に、社会は豊富に」を考えると使い方の責任があると思います。子供に教育費をかけるのでも、ただ子供の立身出世でなく人格が勝れるような教育にお金を使ったり、光熱費を使うにしても地球環境に優しくそして温暖化に配慮したり、子供が食べるものがないという貧困への対処も考えていきたいです。友の会では社会に差し出すものを公共費と呼んでおり15億円になっています。これは1世帯年間8万円になります。ユニセフや社会に向けた活動費、教会への寄付も含まれます。子供の教育が終わって社会への還元が公共費になっています。


【友の会の催しや講習会について】
東京第一友の会のホームページでは、様々な活動をご案内しているのでご覧ください。


【質疑応答】
1.      友の会の社会に向けた活動を簡単に紹介してもらいたい。また友の会に所属していないと興味ある活動があった場合、参加できないのですか。
→ 東北の大震災があった時は、その直後から支援のため現地入り。現在も、その活動は続いています。国内外の災害があった場合、「公共費」にプールされている500万~1000万円をお送りしたり、物資や毛布を送っています。
→ 非会員が参加された活動として、東北への支援として家にある和服を集めて、ほどいたりアイロンをかけたり布に東北の人が製品にして収入になるような活動もありました。
→ 東京第一友の会は14の地区に分かれて、その中でさらに家の近いもの同士が「最寄り」を形成して数人単位で普段の活動をしています。ご希望があれば、近くの「最寄り会」をご紹介します。



【開催】
日時:  2018年月日(土)10001130
会場:  池ビズ 6 多目的ホール
参加者: 豊島区民 49


【受講者の感想】
-1 羽仁もと子家計簿をつけていますが、1枚家計簿に1月の数字を入れてみたいと思いました。
-2 保険にどれくらいお金を掛けるべきか知りたかった。友の会の家計簿では、頂き物を現金に換算しているということを昔聞いたことがあり馴染めないと人が話していたので、その辺のところが知りたかった。友の会の主婦はとても皆さん素晴らしくて、ちょっと近寄り難い気もします。
-3 参考になりました。またこのような機会を設けて頂ければ有り難く思います
-4 介護や在宅医療についての講演は、参加者(高齢者)に役立つのではないでしょうか
-5 今迄も自分なりに家計簿をつけていたが、良い資料と参考になる話しを聞かせて頂いた。感謝
-6 防災、生涯続けられる手芸の講演会を希望します
-7 家計簿は30年以上記入しています。何回か講演に参加しましたが、今回の講演は家計簿のベテラン用の内容だと感じました。私は家計簿のポイント、細かなことではなく、これから始める人の動機チャンスになる内容のものが良かった。統計的なものが多く、初心者には糸口になったでしょうか。最初に記入ポイントの話しをしてもらいたかった。          
-8 プロジェクターでデータ(食事調べとか色々)を出した時の反応がおもしろかった。意外に好反応でびっくりした。(こんなことやってるんだ。凄いなって感じでした) 友の会への興味を持って頂けて良かったですね
-9 従来のような細かな分類で波ないが、自分なりの家計簿を付けている。今日の話しにもありましたが、クレジットカードや電子マネーなど支払方法が多様化しているので、とりあえず自分の方式でなんとかなりそうだと思った
-10 ①年金生活についてもう少し重点を置いてほしかった、②友の会では、老後の必要経費(病気になった時、施設入居等)をどのように予算化しているのか知りたかった、③費目の分け方に付いて知りたかった
-11 私自身もそうですが、一人暮らし高齢者について公的にどのような援助があるのか、お金の管理が出来なくなるとか、認知症になるとか様々な不安についてのサポートの有無について教えて欲しいと思います
-12 とても良かったです。夫が早期退職を考えているので参考になりました
-13 東京第一友の会に入りたいので、パンフレットが欲しい。どのようなものか知りたい
-14 家計簿の分析・見方を丁寧に説明され、改めて納得することがありました。家計簿はつけているのですが、1枚で見渡せる感覚を味わうために1枚家計簿をつけてみようと思います。生活がもう少し具体的にみえたらよかったと思います


【アンケートに対する友の会回答
上記2番に対して
①保険にどれくらいお金を掛けるべきか知りたかった。
→ 保険は家庭経済の安定のために掛けるものですから、掛け金が日々の生活を圧迫しては本末転倒になります。無理のない範囲で考えればいいと思います。医療保険のことでしたら、高額療養費制度もあり、医療費自体はそれほど多くはならないと思います。差額ベッド代や雑費分として、入院日額5000円~10000円の保障があればいいのではないでしょうか。

②友の会の家計簿では、頂き物を現金に換算しているということを昔聞いたことがあり、馴染めないと人が話していたので、{何故換金して把握しなければならないのか}その辺のところが知りたかった。
婦人之友社の家計簿には、食費のページの最後に、到来の物、生産の物を書いておく欄があります。おそらくその欄のことを言っていらっしゃるのかと思いますが、これは、いただき物などをメモしておけば、食費予算に対して、予算より実際の額が少ない理由がわかるというくらいの使い方です。

上記10
②友の会では、老後の必要経費(病気になった時、施設入居等)をどのように予算化しているのか知りたかった{もしデータがあればお願いします。額は幅があるものだと思います}
→ 会員同士の勉強として、高年研究グループというのがあり、お互いの入院費や、施設入居などの費用も見合う機会があり、参考にし合っていますが、友の会として特にデータを公表していません。定年後の生活費として15年か20年くらい先までに取り崩す予定の金額を決めて、それ以外を準備金と考えておき、予算化は、徐々に、事情に合わせて具体的にしていくことかと思います。

上記13
東京第一友の会に入りたいので、パンフレットが欲しい
→ 東京第一友の家にご連絡いただければ、お住まい近くの集まりをご案内できます。   ホームページもご覧ください。

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