ドキュメンタリー映画を身近に
1、日時 2018年11月30日(金)18時~20時
2、場所 豊島区地域活動交流センター(としま産業振興センターIKE・Biz4F) 会議室
3、講座名 「ドキュメンタリー映画を身近に」
4、講師名 早川 由美子氏
1975年東京都出身 映画監督(ドキュメンタリー専門)
大学卒業後、公務員、会社員を経て2007年に渡英。
ロンドンでジャーナリズムを学ぶ傍ら、独学で映像制作を始める。
イギリスの平和活動家ブライアン・ホウに密着したドキュメンタリー「ブライアンと仲間たち、パーラメント・スクエアSW1」で、2009年度日本ジャーナリスト会議・黒田清JCJ新人賞受賞。
日本の公共住宅問題をテーマにした「さよならUR」(2011年)で、山形国際ドキュメンタリー映画祭・スカパー!IDEHA賞を受賞。
最新作は 「インド日記~ガジュマルの木の女たち~」(2016年)
主な監督作品 「踊る善福寺/ホームレスごっこ」(2014年)
「木田さんと原発、そして日本」前編&後編(2013年)
「乙女ハウス」(2013年)
5、講座内容
①映像を撮るようになったのは
会社員時代、土日を使って物を書いてミニコミ誌に掲載していた。
ある時、座りにくそうなベンチを見つけ、これは野宿者を排除するように作られたと気づいた。排除するだけでは問題解決にはならないと思い、「東京で一番寝にくいベンチを探せ」と、土日の休みに東京都内の公園を回るようになった。ホームレス100人くらいにインタビューして記事を書いた。
発表するところがなくネットで記事発表したら、思った事と違う形で炎上してしまった。それが注目を集め、筑紫哲也氏の「ニュース23」という番組の取材が来た。ディレクターに4日間取材されたが5分の放送時間だった。ディレクターが一人でハンディーカメラを使って撮影した映像だったが、TVの映像の影響力の凄さに気づいた。自分も映像をやってみたいと思うようになった。
2006年の年末にビックカメラで5万円の映像カメラを買ってスタートした。
②イギリス留学で
ロンドンでジャーナリズムを学ぶためにイギリスに留学した。ロンドンの最貧地域に住んだ。パキスタン移民が多くイスラムエリアだったが、1年半いて怖い思いはしなかった。
ブラジルやポーランドの人たちの料理や本棚のコレクションなど、日常生活何でも撮影した。普通の人の日常生活を撮るだけでは上達しないと気づき、編集に力をいれた。
他人に映像を見てもらうには編集が必要。編集ソフトを使ってパソコンで3分~5分の映像にしてユーチューブにアップした。爆発的にユーザーが拡大した。
③「ブライアンと仲間たち、パーラメント・スクエアSW1」を撮る
きっかけは、ロンドンの国会前(パーラメント・スクエア)にテントの群れが見えたことだった。野宿かと思ったら、戦争に反対して2001年から抗議活動をしている人達だった。その人達を取材し記録し始めた。見張り番を積極的してご飯をもらったりした。政府による嫌がらせやデモ妨害なども見てきた。3か月目から1年半かけて撮影し、2009年に完成させて帰国した。日本ジャーナリスト新人賞に応募したら選ばれた。しかし、映画を上映していくことは製作するのと同じくらい大変。
④ドキュメンタリー映画の上映について
自主製作のドキュメンタリー映画が上映できる場所が少ない。無名作品は、モーニングショーやレイトショーで上映。テレビのドキュメンタリー放送も、日本では深夜放送である。
映画は個人で作れるが、上映は難しい。平和団体に売り込むが、団体のテリトリーがあって上映できなかった。
市民メディアの会が興味を持ってくれて、北海道から沖縄まで約100か所で自主上映会ができた。
日本のあちこちに平和・労働・公害等の問題に取り組んでいる人達がいることを知り、あらゆる社会問題に触れるきっかけとなった。
その社会問題に取り組んでいる人たちは高齢の方が多く、平和運動でも貧困や労働問題でも、若い人は少なかった。若い人たちは社会問題に取り組む余裕がないのではないかと考えた。家賃が低ければ、人生の選択肢も広がる。住まいのことが何とかなればもっと社会問題に関心が行くのではないかと思い、「住まい」をテーマに作品を撮るようになった。
⑤「住まい」をテーマに
家賃など住まいにかかる費用が低ければ若い人がもっと社会問題に関わるのではないかと思い、住まいに関するドキュメンタリーを撮るようになった。
イギリス帰国後、姉の家に6年間居候した。その後も家賃を払う生活はしていない。シェアハウスの撮影中はシェアハウスにいた。撮影のため新興宗教の集会所にいたこともある。
現在は埼玉の空き家を管理して住んでいる。家の管理をしているので家賃と光熱費はただ。庭を畑にして野菜を育てているので、野菜は自給です。午前中は畑仕事、午後は編集をする生活をしている。
⑥今後は?の質問に
ドキュメンタリー撮影は女性の方がやりやすい。男性は警戒されることがあるので。
社会的に弱い人、道から外れた人、なかなか表に出てこない人、聞こえてこない人達の声を発信していきたい。リアルなものを作品として残していく。ドキュメンタリーは、撮影許可をもらっても後からNGと伝えてくる場合がある。試行錯誤で模索しながら考えていくが、さらしていく覚悟が必要。とられる人にも勇気を持って欲しい。
NHKでさえ、国民に都合の悪い映像は流されなくなった。社会の問題をTV・新聞などで取り上げるのはほんの一部で限界がある。状況を変えたいと思うなら自分たちで映像を撮っていくのが良い。
6、感想等
ドキュメンタリー映画を撮っている女性(しかも海外でも)と聞いていて、早川さんは男性的でたくましい人と勝手に想像していました。実際にお会いして細身で華奢、話し方も丁寧で穏やかな口調でした。こんなに細い感じでソフトな方が社会問題のドキュメンタリー映画を撮っているなんて、と正直ビックリしました。(あくまでも個人の感想です。すみません。)
まず早川さんの行動力と情熱に脱帽です。身近にある社会問題に関心はあるものの、それを映像にして発信していくことは並大抵のことではありません。早川さんを突き動かすエネルギーはどこから湧いてくるのか知りたいと思いました。社会に対する感性、社会悪を追及する正義感、人間に対する深い愛情が人一倍強い方だと感じました。
そして、やりたいと思ったことを始める決断力とフットワークの良さは、スゴイの一言です。
公園のベンチがオシャレに変わっていったのは何となく気づいていましたが、それを野宿者の目線でとらえていくこと自体が、早川さんの社会を見る目なのだと知りました。誰の立場に立って物事を見ていくか、色々考えさせられました。社会的に弱い人の立場、少数者の立場、光の当たらない所にいる人の立場、事実を知ってしまった人の立場など、目線を変えると物事が違って見えます。当たり前のことですが、大切なことと気付きました。
早川さんのように現実に起きていることを映像として発信してくださる方がいるから、私のような一般人は「知る」ことができます。ドキュメンタリーは世界を変えていくポイントになれると思いました。情報操作の問題もあるので、情報を鵜吞みにせず正しい情報を見極める力も必要になっています。
ともあれ様々なことを考えた講演会でした。
頂いた「トウルシー(ホーリーバジル)」の種子を来年5月に蒔いて、育てていこうと思いました。
(記録 本間)
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